多汗症
Hyperhidrosis

多汗症は、頭や顔、手足やワキの汗が通常の人よりずっと多く、日常生活に支障をきたしている状態です。

他の病気が原因となって汗の量が多くなる場合もありますが、明らかな原因が見当たらず体の特定部位に大量に汗をかく場合を「原発性局所多汗症」と呼びます。

ワキの多汗症について

原発性局所多汗症のうち、ワキの多汗症の症状がみられるものを原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)といいます。

シャツに汗ジミができて気になる方、ワキから汗が流れ落ちる不快感で勉強や仕事に集中できない等の症状がある方はご相談ください。

多汗症の目安Criteria

多汗症はどの程度日常生活に支障が出るかが基準になります。ご自身で異常を感じたタイミングでの受診をお勧めします。

重症度を診断するHDSS(多汗症重症度評価尺度)の説明図

多汗症の治療Treatment

多汗症の治療の基本は、多汗症治療には外用薬・内服薬を用います。多汗症の治療は症状を緩和させる、改善させるための対処療法であり、多汗症自体を完治させることはできません。

当院では、原因を探りながら、症状を上手にコントロールすることで、日常生活に支障がないようにすることを治療の目標としています。

治療につかわれるお薬

抗コリン薬に分類される
外用薬(保険適用)

エクリン汗腺のムスカリン受容体を選択的に遮断することで汗の過剰な分泌を抑える抗コリン薬に分類される、エクロックゲルとラピフォートワイプの2剤が処方可能です。

閉塞性隅角緑内障や排尿障害のある前立腺肥大の方には使用できません。ワキに皮膚炎や傷のある方も注意が必要です。妊婦・授乳婦に対しては治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与可能。乳汁中への移行が報告されています。

頻度は低いものの、皮膚のかぶれ、口の渇き、光をまぶしく感じる、目がかすみ、尿がでにくいなどのリスクがあります。

エクロックゲル

アプリケーターに薬液をのせて、ワキ全体に塗り広げて使います。1本が2週間分の量となります。
12歳から使用可能です。緑内障の既往歴がある方、前立腺肥大による排尿障害のある方への使用はできません。

ラピフォートワイプ

汗拭きシートのような1回使い切りのワイプ製剤。袋から出したワイプを広げて、一枚で両ワキをひとふきします。
使用後はすぐに手に付着した薬剤を洗い流すことが必要です。
9歳から使用可能です。

プロバサイン
(内服薬/保険適用)

保険適応のある唯一の内服薬で、外用薬と同じ抗コリン剤に分類されます。

多汗症ガイドラインによれば、全身のどの部位の多汗症に対して用いることができますが、
治療効果にバラつきがあることから他の治療の補助的な位置づけの薬です。

<使い方>

比較的短時間で効果がでることと、有効時間が4~5時間程度であることから、仕事や人と会う行事やイベントなどの前に頓服的に内服していただくことが多いです。貯法は2℃~8℃での保管が必要となるため、処方された場合は冷蔵庫で保存することをお勧めします。

禁忌及び副作用について

  • ・閉塞隅角緑内障・排尿障害のある前立腺肥大・重篤な心疾患・麻痺性イレウスの既往のある方は使用できません。
  • ・排尿障害のない前立腺肥大・甲状腺機能亢進症・うっ血性心不全・不整脈・潰瘍性大腸炎・開放隅角緑内障などの方、高温環境で長時間過ごされる方、高齢者は副作用のリスクが高まるため、注意が必要です。
  • ・妊婦・授乳婦に対しては治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与可能。
  • ・小児に対する安全性は確認されていません。

内服薬ですので、塗り薬より副作用の頻度は高くなっています。(5%以上)
目のかすみ、口の渇き、便秘、頭痛、眠気などを感じることがあります。内服液治療中は自動車の運転など
危険を伴う機会の操作をしないように注意してください。

塩化アルミニウム外用薬
(保険適用外)

ワキ汗に対しても使用しますが、主に手のひらや足裏の多汗症に使用します。

手足の多汗症で単純塗布だけで効果が弱い場合は、密封療法を行うこともあります。塗り方によって、かぶれや刺激症状がでやすいことが欠点です。

多汗症のよくある質問FAQ

Q多汗症の治療はどのような内容ですか?汗がでなくなるのでしょうか?

外用薬ではエクロックゲルをワキに1日一回塗布します。過剰な分泌を抑えるように働きますので、汗が出なくなるというわけではありません。また、ラピフォートワイプは1枚のシートで両脇をふき取るタイプのワイプ製剤です。使用後はすぐに手に着いた製剤を洗い流すようにしてください。緑内障の既往歴がある方へは使用することができませんのでご注意ください。

Q手がベタベタするのは多汗症と関係がありますか?

暑さを感じた時だけでなく、常にベタベタと感じている場合は、多汗症の可能性もあります。
判断基準は、ご自身の日常生活に支障をきたすかどうかになってきますので、気になる症状がどの程度なのか、以前に比べてひどくなっていないかどうかをご相談ください。

Q汗が気になるので困っています。日常生活で気を付けておくことなどありますか?

汗には体温調整のほかに、緊張や興奮するなどの精神的な影響を受けて汗をかく「精神的発汗」があります。
ストレスや生活習慣、ホルモンバランスの影響で自律神経が乱れると発症しやすくなります。

自律神経のバランスを乱さないよう、生活習慣を見直し、睡眠不足や運動不足にならないように気を付けましょう。
また、ニコチンやカフェインの過剰摂取も交感神経の刺激になり、発汗を促してしまうので過剰に摂取しないようにしましょう。リラックスすると副交感神経を優位にすることができるので、発汗を抑える働きをします。休憩する時間を持ち、
ストレスの解消、気持ちのリフレッシュをするように心がけましょう。