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皮膚科で「薬だけ」は原則NG|診察が必要な本当の理由

2025/10/07

「前と同じ薬だけほしいのに…」そう思ったことはありませんか?

忙しい日々のなかで、通院が負担に感じられるのは自然なことです。

しかし、皮膚科での「薬だけ処方」は、実は医師法により原則として禁止されています。

この記事では、なぜ診察が必要なのか、例外的に可能なケース、オンライン診療の誤解、そして患者として気をつけたいポイントまで、皮膚科医の視点でわかりやすく解説します。

1. なぜ薬だけもらうことはできないのか?

皮膚科では「前と同じ薬だけもらえればいいのに…」という声をよく耳にします。

しかし実際には、診察なしで薬だけを受け取ることは法律上できません。

1-1. 医師法20条が禁止している「無診察治療」とは

医師法第20条では、医師は患者の診察を行わずに薬を処方することを原則として禁じています。

これは、薬の使用が誤った状態で行われることによる健康被害を防ぐための制度です。

とくに皮膚の病気は、季節や生活習慣、ストレスなどによって症状が日々変化します。

見た目は似ていても、実は治療方法が異なるケースもあるため、医師の診察を受けることが安全な治療の第一歩になります。

1-2. 「同じ薬だから診察なしでOK」はなぜ危険なのか

「前と同じ薬なら問題ないはず」と思っていても、肌の状態は目に見えにくい変化をしていることがあります。

たとえば、前回処方されたニキビ治療薬が合わなくなっていたり、同じ外用薬でも炎症の範囲が広がっていて用量や強さの調整が必要になることもあります。

診察を省略してしまうと、そうした変化に気づけず、かえって症状を悪化させてしまうことも少なくありません。

こうした医療上・法的な観点から、再診であっても必ず何らかの診察が必要です。

対面だけでなく、オンライン診療や電話再診など、忙しい方にも対応しやすい仕組みもあります。

薬だけを求める前に、「今の肌の状態を確認することが、自分のためになる」と考えて、ぜひ相談してみてください。

2. 再診でも診察が必要

「毎月通って同じ薬をもらっているのに、どうして毎回診察が必要なの?」こういった疑問を抱える患者さんは少なくありません。

しかし、診察が求められるのには、しっかりとした理由があります。

2-1. 皮膚の状態は毎回変化するもの

皮膚の状態は、ほんの数週間でも大きく変わることがあります。

たとえば、湿度の高い季節にはアトピーの症状が強く出やすくなり、冬場には乾燥によるかゆみや赤みが目立つケースも。

さらに、ストレスや食事内容、睡眠不足など、日常生活の影響も肌に反映されます。

こうした変化は患者さんご自身では気づきにくい場合も多く、見た目には問題なさそうでも、医師の目から見ると処方内容を見直す必要があるケースは少なくありません。

再診のたびに診察を行うのは、現在の状態に合った薬を安全に使っていただくための大切なステップなのです。

2-2. 「薬だけ希望」はどう伝えるべき?

患者さんのなかには「どうしても時間が取れない」「できるだけ短時間で済ませたい」という方もいます。

そのような場合、「薬だけもらいたい」とストレートに伝えるのではなく、「前と同じ薬が合っているように感じるが、今の状態でも使って大丈夫か見てほしい」といった言い方がおすすめです。

このように相談すれば、医師としても診察の中で必要なポイントを確認でき、結果としてスムーズに処方が行える場合もあります。

大切なのは、「診察を受けずに済ませたい」という一方的な要望ではなく、「いまの自分の状態に合った適切な薬がほしい」という姿勢でコミュニケーションを取ることです。

3. 「リフィル処方箋」とは?診察なしで使えるわけではない

最近よく耳にするようになった「リフィル処方箋」。これを聞いて「診察なしで薬だけもらえる制度なのでは?」と誤解される方も少なくありません。

しかし、リフィル処方箋はすべての患者さんや薬に使えるわけではなく、適用にはいくつかの条件があります。

3-1. リフィル処方箋のしくみ

リフィル処方箋とは、慢性疾患などで病状が安定している患者さんに対して、医師の判断のもと、一定期間内に同じ薬を繰り返し調剤できる処方箋のことです。

最大で3回まで薬局での調剤が可能ですが、使用できる薬は限定されており、どんな薬でも対象になるわけではありません。

皮膚科領域でよく使われるステロイド外用薬や抗菌薬などは、漫然とした使用による副作用のリスク管理が必要なため、リフィル処方の対象外となることがほとんどです。(例:ステロイドによる皮膚萎縮や酒さ様皮膚炎、抗菌薬による耐性菌など)

また、リフィル処方箋を出すかどうかは医師の裁量に委ねられており、「希望すれば誰でももらえる」というものではありません。

3-2. 皮膚科での対応例と注意点

たとえば、乾燥肌用の保湿剤や軽度のかゆみに使う外用薬など、比較的副作用が少なく使用方法が安定している薬に関しては、リフィル処方箋が適用されることもあります。

ただしその場合も、診察で医師が「今後しばらく状態が安定していそう」と判断したときに限られます。

また、リフィル処方箋であっても、使用途中に皮膚の状態が変わった場合や、副作用が出た場合はすぐに医療機関を受診する必要があります。

「薬が残っているから安心」と思い込んで放置してしまうと、治療のタイミングを逃してしまうことにもなりかねません。

4. オンライン診療でも「診察」は行われている

「オンライン診療なら、診察なしで薬だけもらえるのでは?」と考える方がいますが、これは大きな誤解です。

オンラインであっても、医師が患者の状態を確認する診察行為は必ず行われます。

4-1. オンラインでも医師法第20条は適用される

医師法第20条では、診察なしでの治療や処方は原則禁止されています。

これは対面でもオンラインでも同じです。オンライン診療は、対面の診察が難しい方にとって便利な選択肢ですが、あくまで「診察の手段が異なる」だけで、診察そのものを省略できるわけではありません。

診療中は、ビデオ通話を通じて皮膚の状態をカメラで確認したり、患者からの問診を丁寧に行ったりと、医師が医学的判断を行うプロセスがしっかりとあります。

したがって、オンライン診療でも「診察を受けたうえで薬が処方される」という流れに変わりはありません。

4-2. オンライン診療で処方できる薬の範囲

オンラインで処方できる薬には制限があります。とくに皮膚科で使われる外用ステロイド剤や抗菌薬など、使用方法を誤ると副作用が出やすい薬については、医師が十分に状態を確認できなければ処方できないこともあります。

「通院が難しいからオンライン診療で済ませたい」というお気持ちもよくわかりますが、自己判断で薬だけを求めるのではなく、「いまの状態をしっかり診てもらう」ための手段としてオンライン診療を活用していただければと思います。

5. 薬だけの処方が誤解される理由と注意点

「前に使っていた薬をまたもらいたいだけなのに、どうして診察がいるの?」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、「薬だけをもらう」という考え方には、いくつか大きな誤解があります。

5-1. 「薬だけ=診察不要」という誤解

薬を受け取ることが目的になってしまうと、診察の必要性が見えにくくなります。

特に皮膚科では「いつもと同じ薬なら問題ない」と思われがちですが、皮膚の状態は目に見えない変化をしていることもあります。

医師はその変化に気づき、より効果的な治療や副作用の予防につなげるために診察を行っています。

つまり、「いつもの薬を出すだけ」のように見えても、その背景には医師の細かな観察と判断があるのです。

5-2. 「薬があるから安心」ではない理由

症状が落ち着いている時期でも、薬を自己判断で継続することにはリスクがあります。

たとえば、ステロイド外用薬は使い方によっては皮膚が薄くなったり、リバウンドを引き起こしたりすることがあります。

また、ニキビ薬や抗菌薬も、使い続けることで耐性菌ができてしまう恐れがあります。

医師の診察を受けることで、薬の使い方や期間を見直すことができ、副作用を防ぐだけでなく、より効果的な治療につなげることができます。

「今回は薬だけで大丈夫そう」と思っても、まずは気軽にご相談ください。あなたの肌にとって、本当に必要なケアを一緒に考えていきましょう。

6. よくある質問

皮膚科で薬だけもらうことはできますか?

原則として、薬だけを処方することはできません。

医師法第20条により、診察なしでの処方は禁止されています。

皮膚の状態は目に見えない変化があることも多く、医師の診察を通じて安全で適切な治療が可能になります。

診察なしで薬だけもらうことはできますか?

できません。対面でもオンラインでも、薬の処方には必ず診察が必要です。

診察とは、医師が問診や視診などを通して医学的に状態を確認すること。

これを省略すると、医師法に違反するだけでなく、適切な治療が行えなくなってしまいます。

薬だけ処方してもいいの?

いいえ、診察を受けずに薬だけを処方することは法律で禁じられています。

特に皮膚科では、薬の効果や副作用が見た目に表れやすく、適切な判断を下すには定期的な診察が不可欠です。

安全のためにも医師の判断を仰ぎましょう。

皮膚科でニキビ薬はもらえますか?

はい、診察を受けたうえで適切なニキビ治療薬を処方することが可能です。

症状に応じて、外用薬、内服薬、またはスキンケア指導などが組み合わされます。

ただし、薬の選択や使い方は個人差があるため、必ず医師に相談してください。

ニキビに薬は塗らないほうがいいですか?

自己判断で塗らないのはおすすめしません。

炎症が悪化したり、ニキビ跡になったりすることがあります。

ニキビ治療薬は使い方が重要で、肌に合っていない場合は逆効果になることも。

医師の診察を受けて、正しい治療を続けることが大切です。

皮膚科で内服薬はどうやってもらえますか?

まずは医師の診察を受け、症状に応じた内服薬が必要と判断された場合に処方されます。

ニキビやアトピーなど、体の内側からのアプローチが必要な場合に使用されることが多いです。

市販薬との飲み合わせなども考慮されるため、必ず医師に相談しましょう。

まとめ

皮膚科で「薬だけもらいたい」という希望は多くありますが、診察なしでの処方は医師法により禁止されています。

継続的な診療と信頼関係が、安心かつ安全な治療の土台です。皮フ科では、患者さんの負担を減らしながらも、適切な診察と処方を行っています。

まずは一度、医師に相談してみましょう。