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安全か?効果的か?皮膚科の未承認薬について専門医が解説

2025/05/01

この記事では、皮膚科の未承認薬について、医療脱毛やシミ治療、ニキビ治療に詳しい専門医がその効果とリスクを明らかにします。

みなさんが安全に理解できるように、具体的な事例をもとに解説を進めていきます。

1.未承認薬とは?

未承認薬とは、ある国の政府機関や保健局によって承認されていない医薬品のことを指します。

日本においては、医薬品、医療機器等の品質、有効性、安全性を確保するために、厚生労働省が厳格な審査を行い、承認された医薬品のみが市場で販売されることが許可されています。

1-2.皮膚科薬の規制承認までの流れ

皮膚科薬の開発と市場への導入は、厳格な規制プロセスを経て行われます。

これは患者の安全を保障し、有効な治療法が提供されることを確実にするためです。

日本では、このプロセスは厚生労働省が中心となって運営されています。

以下にその主なステップを詳細に説明します。

STEP.1:申請書の提出

医薬品の開発者は、新しい皮膚科薬の承認を得るために、必要な文書とともに申請書を厚生労働省に提出します。

この申請書には、薬の成分、製造過程、予想される効果と副作用、行われた臨床試験のデータなどが含まれています。

STEP.2:信頼性調査

提出された申請書とその付随情報は、まず信頼性が評価されます。

これには、提供されたデータの完全性や、臨床試験の結果が信頼に足るものかどうかが検討されます。

STEP.3:審査専門員との面談

申請書が受理されると、審査専門員と申請者の間で面談が行われます。

この段階で、薬の使用方法、目指す治療効果、潜在的なリスクなどについての詳細な議論が行われます。

STEP.4:製品製造所の調査

安全性と品質を保証するために、製品が製造される施設も審査の対象となります。

製造プロセスが適切であるか、品質管理基準に準拠しているかなどが確認されます。

STEP.5:厚生労働大臣の承認

全ての審査が完了し、問題がないと判断されれば、最終的に厚生労働大臣の承認が下ります。

これにより、薬は日本国内で販売されることが許可されます。

STEP.6:承認完了

承認が下りた後、薬は市場に出され、医療機関を通じて患者に提供されるようになります。

しかし、市場に出た後も、副作用の報告や長期的な効果のモニタリングが続けられます。

このプロセスは、新しい皮膚科薬が患者にとって安全かつ効果的であることを保証するために不可欠です。

厚生労働省による厳格な規制と継続的な監視が、医療の質を維持し、患者の健康を守る上で重要な役割を果たしています。

1-3.未承認薬の使用について

未承認薬を使用することは、一般的には厳しく規制されており、特定の病状に対して他に適切な治療が存在しない場合など、限られた状況下でのみ認められることがあります。

このような薬剤は、通常、海外で承認されている場合が多く、日本国内での承認を待つ間に個人輸入などの形で使用されることがあります。

  • 未承認薬の定義:国の政府機関によって承認されていない医薬品。
  • 安全性と効果:国内での安全性や効果が未評価。
  • リスク:使用にはリスクが伴うことがある。

1-4.国内外の未承認薬の例

国内で未承認ながらも海外で広く使用されている薬として、イソトレチノインが知られています。

この薬は主に重度のニキビ治療に用いられるもので、アメリカやヨーロッパでは広く認可されていますが、日本では厚生労働省の承認が取れていないため、保険適用外となります。

同様に、トレチノインもアンチエイジングや肌の若返りに効果的とされていますが、これもまた日本での承認を得ていない状態です。

これら未承認薬の使用に際しては、適切な医療機関での診察を受け、医師の指導のもとで慎重に進めることが極めて重要です。

安全性や効果を正確に理解し、個人の健康を守るためにも、情報に基づいた意思決定が求められます。

2.未承認薬の使用状況

未承認薬の使用は、日本国内で非常に制限された環境下で行われていますが、その需要は高いといえます。

特に、効果的な治療法が国内で承認されていない重度の疾患に対して、海外で承認されている薬剤を使用することがあります。

2-1.未承認薬の入手方法と法律

未承認薬を入手する方法は数少なく、厳格な規制の下で行われます。

最も一般的な方法は、医師が患者の治療のために必要と判断した場合、特例として個人輸入を許可することです。

このプロセスには、医師の診断書や薬剤の使用に関する詳細な説明が必要とされ、厚生労働省による承認を受ける必要があります。

また、薬機法(旧薬事法)に基づき、未承認薬の取り扱いには特定の条件が定められており、これに違反した場合、法的な罰則が科されることがあります。

厚生労働省:無承認無許可医薬品情報

https://www.mhlw.go.jp/stf/kinkyu/diet/musyounin.html

入手方法:医師の判断により特例として個人輸入が許可される場合がある。

法律:国によって規制が異なるため、法的な認識が必要。

 

2-2.未承認薬は輸入できる?

未承認薬の個人輸入は、日本の薬機法により厳しく規制されています。

ただし、治療が必要と判断された場合に限り、医師の指示に基づき、特例として許可されることがあります。

個人輸入を考えている方は、必ず専門の医師と相談し、法律に則った正しい手続きを行うようにしてください。

3.ニキビ治療における未承認薬

ニキビ治療において、未承認薬が注目される例としてよく挙げられるのが、イソトレチノインという薬です。
これは、特に重症のニキビ治療に効果的であり、他の治療法では改善が見られなかった患者に対して、顕著な改善をもたらすことが報告されています。

3-1.未承認薬のリスクと安全性

未承認薬の使用は、多くのリスクと安全性の問題を伴います。

イソトレチノインの場合、重篤な副作用が報告されており、特に妊娠中の女性が使用すると胎児に重大な影響を与える可能性があります。

また、肝機能障害やうつ症状を引き起こすことも知られています。

これらの副作用は、患者と医師が密接に連携し、定期的な健康チェックと慎重な管理下での使用が必要です。

  • 情報と指導:未承認薬使用時には正確な情報提供と医師の指導が不可欠。
  • リスク理解:副作用のリスクを理解すること。
  • 治療選択:全ての治療選択肢を慎重に検討。
イソトレチノインの副作用と禁忌事項
主な副作用 ・重篤な精神疾患(うつ、精神病、自傷行為、自殺企図など)

・皮膚と粘膜の乾燥、軽度の鼻血

・頭痛、めまい、吐き気

・発疹、軽度の痒み、落屑

・眼瞼炎、結膜炎

・筋肉痛、関節痛

・肝機能低下

・血中コレステロール値の上昇

・脱毛(一時的)

禁忌事項 ・妊娠中・授乳中、妊娠する可能性のある方

・15歳未満の成長期の方

・イソトレチノイン製剤、トレチノイン製剤、ビタミンAでアレルギー反応のある方

・テトラサイクリン系薬剤を内服中の方

・精神疾患治療中の方

・肝機能障害のある方

・高脂血症の方

・ビタミンA過剰症の方

・大豆アレルギーの方

・レーザー脱毛、光脱毛中の方

3-2.使用時する場合の注意点

薬の種類 効果 主なリスク
 

承認済み薬

国内での臨床試験に基づき効果が確認されている 副作用はあるものの、管理された環境下での安全性が保証されている
 

未承認薬

海外で効果が認められている可能性がある 副作用の全容が不明で、安全性が未確認の場合が多い

保険適応外

 

未承認薬を使用する際には、正確な情報と医師の指導が不可欠です。

患者は副作用のリスクを理解し、全ての治療選択肢を慎重に検討した上で、治療方針を決定する必要があります。

未承認薬の使用は最終手段として検討されるべきであり、使用前には充分な情報提供と患者の同意が求められます。

患者自身が治療に使われる薬のことを積極的に知ろうとすることも重要です。

4. 美容と未承認薬

美容の分野では、より高い効果を求める人と、安全のために定められた厳しいルールとの間で、未承認の薬を使うかどうかについて意見が分かれています。

多くの人々がより良い結果を求めて、通常の化粧品や治療法では得られない成分を含む未承認薬に目を向けることがあります。

これには、アンチエイジング、シミ除去、皮膚の若返りなど、広範な美容目的が含まれますが、これらの薬剤が全て安全であるとは限りません。

4-1. アンチエイジングと未承認薬

アンチエイジング分野では、トレチノインやヒアルロン酸など、未承認となっている製品がしばしば使われます。

これらの成分は、しわの減少や肌の質感の改善に効果が期待できますが、未承認薬は国内の規制を受けていないため、使用にはリスクが伴います。

たとえば、ヒアルロン酸は美容と医療の両方で広く利用されている成分ですが、稀にですが、ヒアルロン酸注射に対してアレルギー反応や感染症を引き起こす場合があります。

注射後に赤み、腫れ、痛み、かゆみなどの一時的な副作用が生じることがあります。

承認済み薬は安全性が確保されていますが、未承認薬ではその保証がないため、使用する際には十分な注意が必要です。

4-2. シミ治療と未承認薬

シミ治療においても、ハイドロキノンや特定のレチノイド系の化合物(例えばトレチノインなど)が注目されています。

これらの成分は効果的に色素沈着を軽減する可能性がありますが、日本ではその安全性や効果が公式には認められていません。

未承認薬を用いたシミ治療は、効果的ですが、リスクもしっかりと理解しておく必要があります。

成分 効果の概要 使用時の注意点
ハイドロキノン 強力な美白成分で、メラニンの生成を阻害することでシミやそばかすを薄くします。 長期使用により皮膚の過敏反応を引き起こす可能性があります。また、日中の使用は避け、夜間のみの使用が推奨されます。
トレチノイン レチノイドの一種で、皮膚のターンオーバーを促進し、シミの色素沈着層を剥がしやすくします。 初期には皮膚の赤みや乾燥、剥けることがあり、紫外線に対する感受性が高まるため、高SPFの日焼け止めの使用が必要です。

美容目的で未承認薬を使用する際は、そのリスクを十分に理解し、医療提供者と相談した上で決定することが重要です。

目に見える結果に惹かれることはありますが、安全性が確保されていない製品に依存することは避けるべきです。

常に信頼できる情報源からの明確なデータに基づいて、自己の健康を守る選択を行いましょう。

5.イソトレチノインと避妊について

イソトレチノインは、重度のニキビに高い効果を示すビタミンA誘導体の内服薬です。

しかし、その強力な作用ゆえに、妊娠に関する重篤な副作用も報告されています。

そのため、男女ともに服用時は避妊を含めた慎重な対応が求められます。

5-1.女性におけるリスクと避妊の必要性

イソトレチノインは、妊娠中の服用により流産や胎児の奇形を引き起こすことが知られています。このため、以下のような対策が必須とされています。

  • 治療開始前・期間中・終了後の3ヶ月間は、避妊が必要です。
  • 服用中は妊娠しないよう、パートナーにも事情を伝え、必ず避妊をしてください。
  • 医師による確認と同意の上、服用が開始されます。

5-2. 男性における注意点と避妊の推奨

男性に対するイソトレチノインの直接的な生殖毒性は報告されていませんが、薬の成分が精子や妊娠中の胎児に何らかの影響を与える可能性があります。

そのため、男性にも以下のような注意が必要です。

  • 服用中はパートナーが妊娠しないよう、避妊を行うことが推奨されます。
  • 服用終了後も1ヶ月間は避妊を継続してください。

✔︎ 治療中の避妊:イソトレチノイン治療を受けている男性は、治療期間中、確実に避妊を行うようにしましょう。
✔︎ 治療後の避妊:イソトレチノインは体内で迅速に代謝されるため、治療終了後すぐに避妊の義務はありませんが、最終投与から少なくとも1カ月は避妊を続けることが望ましいとされています。

5-3. 男女共通の注意事項と医師の指導の重要性

当院では、内服中および内服終了後、女性は3ヶ月間、男性は1ヶ月間、必ず避妊していただくようお伝えしております。

✔︎ 女性は服用前・服用中・終了後の計3ヶ月間、避妊が必要です。
✔︎ 男性も服用中および終了後1ヶ月間は避妊が望まれます。
✔︎ 胎児への影響を最小限に抑えるため、妊娠の可能性がある場合には、服用開始前に必ず医師に相談してください。

6.クリニックで服用する場合

クリニックでのイソトレチノインとトレチノインの服用について紹介します。

これらは主に重度のニキビ治療と皮膚の若返りに利用されています。

6-1.イソトレチノイン内服について

イソトレチノインは、主に重度のニキビ治療に用いられる経口薬です。

皮脂腺のサイズを減少させ、皮脂の生産を抑制し、皮膚細胞の剥離を安定化させて毛穴の詰まりを防ぎます。

出典:えいご皮フ科

  • ビタミンA誘導体の飲み薬で、ニキビ治療に用いられる
  • 皮脂分泌の抑制や毛穴の詰まり改善、炎症抑制、抗菌作用などがある
  • 重症のニキビや、繰り返しできるニキビの治療に用いられる
  • 日本では保険適用外だが、アメリカでは重症のニキビに対する最初の選択肢として使われている薬※妊娠中の方、妊娠を希望される方、授乳中の方は使用できません。

6-2.トレチノイン外用について(AcneMix)(Consensus mix)

トレチノインはトピカル(外用)レチノイドで、ニキビ治療と皮膚の細胞ターンオーバーを促進し、アンチエイジングや肌質改善に役立ちます。

主に夜間に皮膚に塗布し、日中の日光による感受性を避けるためです。

赤み、皮膚の剥離、乾燥などの一般的な反応を引き起こすことがあり、これらの副作用を管理するために保湿剤や優しいスキンケアが推奨されます。

出典:えいご皮フ科

  • 皮膚のターンオーバーを促進し、毛穴の詰まりを正常化させることでニキビを改善する
  • レチノールの50倍から100倍の強さがあるといわれている
  • 肌への効果も高いが、副作用もでやすい※妊娠中の方、妊娠を希望される方、授乳中の方は使用できません。

当院では、患者の肌の状態をチェックし、患者と相談しながら、トレチノインを使用するか通常の施術で治療するかを決定しています。

効果の高い施術だからこそ、メリット・デメリットをしっかりと伝え、納得できる治療方法を提案します。

6-3.イソトレチノインとトレチノインの違い

イソトレチノインとトレチノインは、どちらもビタミンAから作られた成分で、にきびの治りを助けるはたらきがあります。

ただし、使い方や効果の出かたには違いがあります。

イソトレチノインは、飲み薬として使われることが多く、重いにきびに使われます。

皮脂の出る量をおさえるはたらきが強く、にきびができにくい肌に近づけます。ただし、副作用が出やすいので、医師の診断が必要です。

トレチノインは、ぬり薬として使われます。

毛穴のつまりをやわらげ、にきびやしみ、小じわなどにも使われます。肌のターンオーバーをうながすのが特徴です。

このように、どちらもビタミンAに関係した薬ですが、イソトレチノインは内服薬で全身に作用し、トレチノインは外用薬で肌に直接作用するという違いがあります。

使う目的や肌の状態に合わせて使うことが大切です。

7. よくある質問

未承認薬についてよくある質問と回答をいくつかご紹介します。

未承認薬とは何ですか?

未承認薬とは、その国の政府機関から販売の承認を受けていない医薬品です。

通常、他の国で使用されている可能性がありますが、国内での安全性や効果が正式に評価されていないため、使用にはリスクが伴います。

未承認治療とはどんな治療法ですか?

未承認治療とは、特定の国の保健当局による承認を受けていない医療手段や薬剤を使用する治療法です。

これには、まだ試験段階にある新しい治療法や、他国で承認されているが国内で承認されていない方法が含まれます。

  • 保険が適用されていない治療法
  • 医師の裁量で提供される治療法
  • 承認内容とは異なる方法で使用される薬剤や医療機器

【未承認治療の注意点】

  • 効果や副作用がはっきりしないことがあるため、危険性があるといえる
  • 未承認薬を使用した場合、保険請求ができない可能性がある
  • 未承認薬による副作用が発生した場合、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外になる可能性がある

皮膚科で診察なしで薬はもらえますか?

皮膚科で診察を受けずに薬をもらうことは基本的には不可能です。

医師による診断を受け、適切な治療が処方される必要があります。

これには、患者の安全を守るという法的な義務が伴います。

未承認とは何ですか?

未承認とは、ある国の政府や規制当局がその使用を公式に認めていない製品やサービスを指します。

これには食品、薬品、医療機器などが含まれ、その安全性や効果が国内基準に則って確認されていない状態を指します。

承認されていない医薬品は安全ですか?

承認されていない医薬品が安全かどうかは一概には言えません。
これらの薬は、その国の規制当局による詳細な審査を経ていないため、潜在的なリスクや未知の副作用が存在する可能性があります。

使用する際には十分な注意が必要です。

まとめ

未承認薬の使用はリスクを伴いますが、適切な知識があればその利点も大きいです。

治療やお薬のことで不安や疑問があれば、えいご皮フ科までお気軽にお問い合わせください。