粉瘤(アテローム)
粉瘤とは
大きなお
できやしこり、脂肪のかたまりができたといって受診されることが多い、よくある皮膚トラブルの1つです。顔をはじめ頭や背中などにできることの多い、直径1~2cm 大(ときに 10 cm大)に膨らんだ皮下腫瘤のことです。
触るとつるりとしていて、押さえるとわずかに皮下を移動する感じのことが多いです。表面は皮膚の色に近く、弾力のある硬さで、中心に黒色のいわゆるへそ(開いた毛孔)と言われるものがみられることがあります。内容物は角質や皮脂などいわゆる垢のようなものでできており、くさい臭いがするおから状物質として表面に押し出されたり、赤くはれて痛みがでてくることもあります。放置していると徐々に大きくなっていきます。
<背部のアテローム>
<首のアテローム>
病因
毛穴に徐々に角質や皮脂がたまることで、毛穴が袋状に変化したものです。手のひらや足裏ではイボが変化したり小さなケガの後に皮膚がまくれこんで袋状になって生じることもあります。
粉瘤とまちがわれやすいできもの
- 脂肪腫(lipoma)
- 皮膚の下にある脂肪細胞が増えた良性腫瘍。見た目はほぼ粉瘤と同じ。体幹や腕などに比較的よくみられます。通常、数cm(時に数10cmになることあり)のサイズで、切除やもみだし法によって治療します。
発生率はおよそ1000人に1人で、年齢にかかわらず発生しますが、通常は成人にみられます。脂肪組織の下にある筋肉の層の間まで広がっている場合もあります。 - 石灰化上皮腫(calcifying epithelioma)
- 幼少児の顔面、首、四肢にみられる数ミリから数センチほどの硬い腫瘍。
見た目は粉瘤に似ている場合や少し黄色みを帯びており、触るとごつごつして硬いことが多いです。
治療は小さく切開して腫瘍本体を摘出します。毛根組織が由来の良性腫瘍と考えられています。 - 稗粒腫(Milia)
- 稗粒腫は"はいりゅうしゅ"と読みます。産毛に角質がたまって袋状になった良性のできものです。まぶたに生じることが多く、サイズが1-3mmぐらいのものが多く、クリーム色~黄色でつるんとした外観です。
治療は局所麻酔化で小さな切開を加え、内容を圧出します。 - 外毛根鞘嚢腫(trichilemmal cyst)
- 約90%が頭部に生じます。見た目は粉瘤と同じですが、毛組織が腫瘍化したものです。外観は粉瘤と同じようですが、病理検査を行うことで診断されます。大型のものは、まれに悪性化することがあります。
- 神経線維腫(neurofibroma)
- 末梢神経が腫瘍化したものです。小さなものは粉瘤と見間違うことがありますが、触るとやわらかいのが特徴です。一つだけ発生したり、多数の腫瘍が連なって生じる場合や遺伝的に神経線維腫が多数できる方もあります。
- 皮様嚢腫(dermoid cyst)
- 眉毛の付近に発生することが多く、大きさ10-20mmほどで、見た目は粉瘤とほぼ同じように見える腫瘍です。皮脂腺や毛の組織が袋を作っており、中には毛髪が含まれることもあります。腫瘍が骨膜とくっついて深くまで広がっていることもあります。
- せつ(furuncle)
- 毛穴が化膿したもので、周りの毛穴も巻き込んで大きくなることがあります。
化膿して腫れている粉瘤と見分けが難しいことがあります。治療は抗生剤の内服、症状によっては切開して膿を出すこともします。
粉瘤の悪性化について
粉瘤が悪性化することはまれですが可能性はあります。有棘細胞癌、基底細胞癌などが嚢腫壁に生じることが報告されています。切除した腫瘤(できもの)は病理検査で悪性化どうかを調べることをおすすめします。
えいご皮フ科の粉瘤治療方法の特徴
- 治療はすべて保険適応となります
- 痛みが少ない
- 手術前に局所麻酔をします。注射の1針目は「痛い」ですが、その痛みを少しでも緩和するため、極細の針を使用したり、痛みを感じにくいように麻酔薬の内容を調整したり、注射針を刺す角度にもこだわるなど痛みが出にくい工夫をしています。
- 仕上がりは小さな傷で目立ちにくい
- 炎症を起こしていない粉瘤は直径4㎜ほどの円筒状のメスを使用して治療する(くりぬき法)ので、最小限の傷ですみます。傷跡がほとんどわからなくなることが多いです。
- 手術時間は通常10分ほどです
(巨大なものや癒着の強い場合は例外となります) - くりぬき法の手術時間は、数分~10分程度と短時間で終わります。
- 不安の軽減
- 小さな手術とはいえ患者様にとっては初めての手術であったり、切る、縫うと聞いただけでも心配なものです。お声がけをしながら手術を進め、専門の看護師が付き添いますのでご安心ください。手術後のケアについても説明させていただきます。
治療
できてしまった粉瘤は自然に治ることはなく、治療は手術による摘出になります。
粉瘤のサイズより一回り大きく切って縫合する治療が一般的ですが、えいご皮フ科では"くりぬき法"という目立たない小さな傷で治す治療を優先しています。
従来の切開手術は、粉瘤の取り残しが少なく、再発率が低いのが特徴ですが、一方で傷跡が大きく残ってしまうデメリットがあります。えいご皮フ科では、傷跡ができるだけ目立たない治療で患者様の術後の負担も軽減したいと考えから、巨大な粉瘤や癒着の強い場合を除いて、ほぼくりぬき法(臍抜き法)を行っています。くり抜き法(臍抜き法)は、粉瘤に小さな穴をあけ、そこから粉瘤の内容物を絞り出した後に、しぼんだ粉瘤の袋を抜き取る方法です。
しかし、腫れあがって痛みがあるときにはこの治療法はできません。その場合は、切開して膿やたまった内容物を排出させ、痛みを楽にする治療になります。後日化膿症状が完全に治まってから切除を行うことが一般的です。この場合は粉瘤が周りの皮下組織とくっついている(癒着)ため、くりぬき法ではなく一般的な切除を行うことが多いです。

粉瘤治療の流れ
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1. お問い合わせ
お電話で問い合わせください。保険適応となりますので当日は保険証をご持参ください。
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2. 医師の診断・治療法の決定
医師の診察、治療法の説明を受けて、納得いただければ、同意書をいただきます。
ご相談のうえ、手術のお日にちを決定します。 -
3. 手術
局所麻酔の後、手術を行います。費用は5,000円~15,000円となります。
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4. 術後の診察
状態によって異なりますが、概ね1週間後にご来院ください。抜糸と術後の経過を診察します。
手術後の生活について
手術当日もそのまま会社や学校へ行く、家事をするなど、日常生活はふつうに過ごしていただけます。
ただし、お尻の大きな粉瘤の場合は術後の安静をお願いすることがあります。
患部の消毒をするため、毎日の通院は必要ありません。ご自身で傷口の洗浄を行い、お薬を塗ってガーゼを当てておいてください。1週間後に再診しますので、傷の状態をみせてください。(切開縫合の場合は抜糸が必要となります。抜糸のお日にちは1週間~10日前後となります)
- 日常生活での注意点
- 当日は、手術部を濡らさないで下さい。
- 次の受診まで、入浴はシャワーでお願いします。
- 術後、2日間はアルコールや運動は控えて下さい。
- 1週間は、激しい運動は控えて下さい。
- お尻の手術をされた方は、デスクワークなど長時間継続して座る際には約30分に1回お尻を軽く浮かせて下さい。
- 手術のリスク、合併症について
- 内出血する場合があります。
- 多少の傷跡は残ります。
- 体質により皮膚が盛り上がりケロイドになることがあります。
- 再発することがあります。
- 縫合不全が起こることがあります。(傷が開いてしまう)
※ご心配なことがあれば、いつでもご連絡ください。
炎症を起こした粉瘤

炎症を起こした
アテローム
炎症性粉瘤は袋の内容物が漏れ出て強い炎症反応や細菌感染を伴っているため、そのまま手術を行うと術後感染や縫合不全(傷が開いてしまう)の原因となります。まず排膿して症状が落ちついたところで、あらためて切除します。
粉瘤についてのQ&A
- Q粉瘤とはどのような病気ですか
- Aアテローム(粉瘤・ふんりゅう、アテローマ)とは、一般的に"しぼうのかたまり"や"にきびの親玉"と呼ばれることがありますが、実は本当の脂肪の塊やにきびではありません。皮膚の下に袋状の構造物ができ、本来皮膚からはがれるはずの垢(あか)と皮膚の脂(皮脂)が、袋の中にたまってしまってできた腫瘍の総称です。
たまった角質や皮脂は袋の外には出られず、少しずつ大きくなっていきます。身体中どこにでもできて、強く圧迫すると、臭いオカラ状の物質が出てくることがあります。 - Q粉瘤はどうしてできるのですか
- Aはっきりしたことは分かっていません。
手足に生じたものはヒト乳頭腫ウイルスによる感染や、外傷がきっかけになることがあるといわれています。 - Q粉瘤は悪性化することはありますか
- Aほとんどありませんが、まれには粉瘤が悪性化したという報告はあります。
- Q粉瘤の治療法を教えてください
- A炎症を伴わない粉瘤は、手術で袋ごと取り除く治療法が一般的です。
えいご皮フ科では、傷が小さく、患者様の負担の少ない、くり抜き法(粉瘤に小さな穴をあけて、その小さな穴から袋を取り出す方法)を優先しています。粉瘤の状態により、最適な治療法をご提案します。 - Q粉瘤は必ず手術をして取らなくてはいけませんか
- A良性腫瘍なので必ず取らなければならないものではありません。しかし、年々大きくなったり、繰り返し腫れてつらい場合は、手術でとった方がよいでしょう。
- Q粉瘤ができて痛いのですが、痛みだけ先に抑えられますか
- A腫れあがって皮膚に圧力がかかって痛みが強くなっています。その圧力をとるためにくり抜きで排膿すると楽になります。しかし、諸事情でくり抜きの処置ができない場合は、消炎鎮痛剤や抗生物質の処方で痛みを抑えることができます。
- Q粉瘤はすぐに取ってもらえますか
- A手術はご予約をお願いしています。
- Q手術は痛いですか
- A局所麻酔をしますので治療中の痛みはありません。
- Q粉瘤を取るのにどれくらい時間がかかりますか
- A手術は概ね10分〜20分くらいです。
数mm程度の小さな粉瘤の手術は5分ほどで終わります。 - Q手術の後は何度くらい通院する必要がありますか
- A通常の手術の場合、1週間後の抜糸まで通院の必要はありません。
大きな粉瘤や、強い炎症を伴う炎症性粉瘤で切開排膿手術をした場合は、翌日または数日後に再診していただくことがあります。 - Q粉瘤を取るのに保険は効きますか
- A診断、検査、手術、病理検査すべて保険適応となります。
- Q粉瘤を取った後に気をつけることはありますか
- A1週間程度、入浴はシャワーにしてください。患部は翌日から石けんで洗っていただきます。
当日、翌日はアルコールや運動を控え、しばらくは激しい運動もお控えください。 - Q粉瘤を取った後に再発することはありますか?
- A適切にとり除くのでまず再発はありませんが、ごくまれに再発する可能性はあります。
- Q手術の跡は残りますか?
- A手術なので全く傷が残らないということはありません。しかし、傷跡ができるだけ小さく目立たずにきれいになる治療法を優先して行っています。お顔で気になる場合は美容皮膚科治療(自費)を受けていただくこともできます。
粉瘤の手術の料金
粉瘤切開手術費用の目安
<健康保険適用 3割負担の場合>
2cm未満 | 5,000~6,000円 |
---|---|
2cm以上4cm未満 | 11,000~12,000円 |
4cm以上 | 13,000~14,000円 |
3cm未満 | 4,000~5,000円 |
---|---|
3cm以上6cm未満 | 10,000~11,000円 |
6cm以上12cm未満 | 12,000~15,000円 |

赤い部分が露出部
粉瘤の手術は京都院で行っております。
診察ご希望の患者様につきましては、各院から京都院のご予約をとらせて頂きます。