ワキの多汗症(原発性腋窩多汗症)
多汗症とは
多汗症とは頭や顔面、手足やわきの汗が通常の人よりずっと多く、そのために生活に支障をきたしている状態です。
他の病気が原因となって汗の量が多くなる場合もありますが、明らかな原因が見当たらず体の特定部位に大量の汗をかく場合を「原発性局所多汗症」と呼びます。
ワキの多汗症について
原発性局所多汗症のうち、ワキに多汗症の症状がみられるものを、原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)と言います。シャツに汗ジミができて人目が気になる。ワキから汗が流れ落ちる不快感で勉強や仕事に集中できない等の症状がある方は、ご相談ください。
当院での治療方法
■ 塩化アルミニウム外用液(保険適応外)
脇汗に対しても使用可能ですが、主に手の平や足裏の多汗症に使用しています。
手足の多汗症で単純塗布だけで効果が弱い場合は密封療法を行うこともあります。塗り方によって、かぶれや刺激症状がでやすいことが欠点です。
■ 保険適応の塗り薬:
エクロックゲルとラピフォートワイプの2剤が処方可能です。
どちらもエクリン汗腺のムスカリン受容体を選択的に遮断することで汗の過剰な分泌を抑える抗コリン薬に分類されます。
閉塞性隅角緑内障や排尿障害のある前立腺肥大の方には使用できません。わきに皮膚炎や傷のある方も注意が必要です。妊婦・授乳婦に対しては治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与可能。乳汁中への移行が報告されています。
- [副作用]
- 頻度は低いものの皮膚のかぶれ、口の渇き、光をまぶしく感じたり、目がかすむ、尿がでにくいなどのリスクがあります。
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・エクロックゲル
アプリケーターに薬液をのせて、脇全体に塗り広げて使う。1本が2週間分の量となります。12歳から使用可能です。
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・ラピフォートワイプ
汗拭きシートのような一回使い切りのワイプ製剤。袋から出したワイプを広げて、一枚で両脇をひとふきします。使用後はすぐに手に付着した薬剤を洗い流すことが必要。9歳から使用可能です。
■ 飲み薬(プロバンサイン)
保険適応のある唯一の内服薬で、塗り薬と同じ抗コリン剤に分類されます。
多汗症ガイドラインによれば、全身のどの部位の多汗症に対しても用いることができますが、治療効果にばらつきがあることから他の治療の補助的な位置づけの薬です。
- [使い方]
- 比較的短時間で効果がでる、有効時間が4-5時間程度であることから、仕事や人と会う、行事などのイベント前に頓服的に内服していただくことが多いです。
貯法は2度~8度での保管なので、処方された場合は冷蔵庫で保存することをお勧めします。 - [禁忌等]
- 閉塞隅角緑内障・排尿障害のある前立腺肥大・重篤な心疾患・麻痺性イレウスの既往のある方は使用できません。
排尿障害のない前立腺肥大・甲状腺機能亢進症・うっ血性心不全・不整脈・潰瘍性大腸炎・開放隅角緑内障などの方、高温環境で長時間過ごされる方、高齢者は副作用のリスクが高まるため、注意が必要です。
妊婦・授乳婦に対しては治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与可能。小児に対する安全性は確認されていません。 - [副作用]
- 内服薬ですので、塗り薬より副作用の頻度は高くなっています(5%以上)。
目のかすみ、口の渇き、便秘、頭痛・眠気などを感じることがあります。内服治療中は自動車の運転など危険を伴う機械の操作をしないよう注意してください。
