季節によくある症例
Seasonal common cases

季節の変わり目やシーズンによって受診の増える皮膚疾患をご紹介します。

季節の変わり目など、自律神経のバランスが乱れやすく免疫力が低下しやすくなります。皮膚の状態がいつもと違うと感じたら、なるべく早めにご来院ください。

季節によくある症例

クリックすると詳細が表示されます。

ひやけ(日光皮膚炎)(sunburn)

過度の日光照射(主としてUVB)によって紅斑、水疱が形成された状態をいいます。光線照射数時間後に照射部に一致して紅斑が生じ、これが次第に浮腫状に変化します。 照射後、12~24時間をピークとして以後は次第に弱くなり、数日で皮がめくれたり、色が黒くなったり、時に色がぬけたりして治っていきます。

【治療】
治療にはステロイドの塗り薬を使います。原因があきらかであり、長期の使用は想定していないため、強めのステロイドでも安心して使えます。ひりつきがひどい場合は、冷却やワセリンなどで覆うように保護すると楽になります。

×

とびひ(伝染性膿痂疹)(flea)

とびひは、伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)と言います。ばいきん(細菌)による皮膚の感染症で、接触によってうつります。広がり方が火事のようにあっという間に広がるということから「とびひ(飛び火)」と呼ばれます。

あせも、虫刺され、湿疹などをひっかいたり、怪我などが二次感染を起こしてとびひが起こります。また、鼻をさわる癖のある方の場合、鼻にはさまざまな最近が常在しているために鼻の周囲からとびひが始まり、鼻を触った手であせもや虫刺されなどを掻くことで悪化します。

とびひのほとんどは、皮膚バリアが未熟なお子さまに起こります。大人の場合は、アトピー素因のある方など、バリア機能が弱い方にみられます。治りにくい場合には、とびひによく似た他の病気(水疱症など)の可能性もあるため、注意が必要です。

【治療】
とびひには、水ぶくれができるタイプと、かさぶたができるタイプにわけることができます。タイプによって治療薬が変わることもあります。

とびひは、何度も繰り返したり、いつまでも治らないということがあります。皮膚のバリア機能が壊れていることが要因であることから、バリア機能を回復させる治療も併せて必要です。

全身に隠せないほど広がっている場合は、幼稚園・保育園・学校などはお休みすることをお勧めしますが、患部をガーゼで覆い隠すことができればお休みしなくても大丈夫です。プールや水遊びは治療を長引かせたり、人にうつづ可能性があるために完全に治るまでは避けてください。

×

水いぼ(伝染性軟属腫)(molluscum contagiosum)

ウイルスによる感染症で、1~2㎜ほどの小さなぷつぷつが身体のあちこちに見られることが特徴です。放置しておいても自然に消えることもありますが、大きくなったり、数が増えたりすることもあります。

年中見られる疾患ですが、プールの時期になると検診などで指摘され相談にこられる患者さまが多くなります。一度治ってしまえば、二度はならない病気です。

【治療】
放置して自然治癒を待つか、セッシ(ピンセットのようなもの)でひとつひとつ摘んで取るという方法があります。当院では、痛みを伴わない塗り薬による新しい水いぼの治療を始めました。銀の強力な抗菌作用を利用した治療薬で、塗り始めてから平均2~3か月でよくなります。

×

しもやけ(凍瘡)(chilblains)

学童によくみられ、好発部位は手、指、足、次に耳介、頬です。温かくなるとかゆみが強くなります。

気温が5~10℃の寒冷暴露によって発症します。繰り返す寒冷刺激によって小さな血管がうっ血して炎症を起こします。厳冬よりも初冬や初春に生じやすく、温暖地でも見られます。
発症要因は気温だけでなく、発汗による湿潤や遺伝的なことも関係します。

【治療】
ビタミン剤や漢方薬の内服、ステロイド外用など

×

夏にかけて増える
虫刺されについて

蚊、ブヨ(ブユ)、アブ、ハチなどの昆虫にさされる虫刺症(虫さされ)やドクガ皮膚炎という毛虫による皮膚炎など虫に刺されることが原因の皮膚炎があります。虫さされと放置すると、とびひや痒疹に移行し治療が長引くこともあります。場合によっては痕が残ってしまうこともあるため、虫に刺されただけと侮らず、治りが悪い場合は早めに受診してください。

虫さされ(虫刺症)

蚊、ブヨ(ブユ)、アブ、ハチなどの昆虫に刺されて生じる皮膚炎のことです。吸血の際に注入される昆虫の唾液腺物質に対するアレルギー反応と考えられます。アレルギー反応であることから、腫れかたやかゆみの程度は、年齢や刺される頻度によって個人差が大きくなり、見た目だけでは何に刺されたかを推測することは難しことも多いです。

刺された直後からかゆみや腫れが出現し、1~2時間で軽快する場合と1~2日してから腫れてくる場合もあります。虫にさされたということがはっきりとしている場合はステロイドの塗り薬や抗アレルギー剤の飲み薬が有効です。

クリックすると詳細が表示されます。

(mosquito)

蚊に刺された場合の皮膚反応としては、刺されてすぐに出現する場合(即時型反応)と、刺されて1~2日で出現する場合(遅延型反応)があります。これらの反応は年齢と共に変化します。最近ではデング熱などの原因になることもあるので、刺されやすい場所に行くときには十分な対策(虫除けスプレーや妨蚊の衣類の着用など)が必要です。

  • 【一般的な年齢による反応】
  • 乳幼児期:遅延型反応のみ
  • 幼児期~青年期:即時型反応と遅延型反応の両者
  • 青年期~壮年期:即時型反応のみ
  • 老年期:いずれの反応も生じないことが多い
×

ノミ(flea)

ネコノミがほとんどです。体長は2-3mmでネコ以外にもイヌにも感染していることがあります。さされると水ぶくれになるのが特徴です。刺されても気づかずに1-2日して症状が出ることもあります。

×

ブヨ/ブユ(blackfly)

ブユ類は体長2~4mm程度の小型のハエのような吸血性の虫です。ブヨ、あるいはブトとも呼ばれ、野外レジャ-の際に刺されます。刺されている時は痛み、かゆみをほとんど感じず、半日くらいすると刺された所が赤く腫れて次第に激しいかゆみを生じます。しこりができて長く残る人もいます。

×

ダニ(mite)

ダニによる虫さされの原因としては、ネズミに寄生するイエダニ類が多いです。体長0.7mm前後ときわめて小さい上に、寝ている間に布団に潜り込んで刺されます。古い一戸建てで、ネズミが生息するような家で被害がでやすいようです。

顔や手足はほとんど刺さず、わき腹や下腹部、ふとももの内側などを刺します。イエダニ類とは別に、山でのハイキングや野外レジャーの際にマダニ類による刺咬を受けることがあります。マダニ類は体長1~3mmで、本来は野生動物に寄生していますが、ヒトの体に取りついてわき腹やふともも、陰部などの皮膚に咬みついて吸血します。そして数日後にはダニの腹部が数mm大に膨らみます。

無理に引き抜こうとすると、頭部が皮膚に残って炎症を起こすことがあります。また、ダニの種類によってはライム病や日本紅斑熱などの感染症を媒介することもあります。

×

ハチ(蜂)に刺された場合

ミツバチやアシナガバチ、スズメバチなどが「刺すハチ」の代表です。

ハチにさされると、激しい痛みが出現し赤く腫れます。初めて刺された場合は、通常は1日以内に症状が治まります。しかし、2回目以降は「ハチ毒」に対する>アレルギー反応が加わるため、刺された直後から蕁麻疹が生じたり、刺されて1~2日で強い発赤、腫れを生じることがあります。

ハチ毒による
アナフィラキシー
ショックについて

ハチ毒による重篤な症状としてアナフィラキシーショックがあります。ハチによる死亡事故はこの特殊なアレルギー反応によるものです。刺されてから30分~1時間で意識消失や血圧低下などを生じ、死に至ることもあります。ハチのいる可能性の高い場所に出かける際には、充分に注意してください。

ドクガ(毛虫)皮膚炎

6月前後と9月前後に診察機会の増える皮膚炎です。急に身体に赤いぶつぶつがでて、原因に思い当たることがないという方が多く、ときには、ヘルペスではと心配される方もいらっしゃいます。毒蛾の幼虫(毛虫)は1匹あたり100万本以上の毒針毛と呼ばれる毛を持っています。この毒針毛が皮膚にささることでドクガ皮膚炎が起こります。

繰り返し刺されることで症状がひどくなり、痛みやかゆみで眠れなくなることや、ひどい場合には、発熱やめまいを起こすこともあります。ツバキやサザンカ、茶などの葉の裏にびっしりと毛虫がついていると要注意です。毒針毛は非常に小さく軽いので、直接毛虫に触れていなくても風に乗ってこの毒針毛にやられることがあります。

ドクガ皮膚炎の治療

ドクガ皮膚炎を早く治すためには、ステロイドの塗り薬が有効です。原因がはっきりとしている場合には繰り返すことがないため、強めのステロイドでも心配はいりません。むしろ早く治してしまう方がよく、ステロイドを使うデメリットよりも断然メリットが大きいです。

ドクガ皮膚炎の対策

毒蛾(ドクガ・チャドクガ・モンシロドクガ)とその幼虫には近寄らない、触らないことです。庭木がある場合は、予防先として早い段階で剪定を行うなど風通しの良い状態を作りましょう。卵塊を見つけたら葉ごと切除しておくと良いようです。毒針毛を固めるスプレーなども市販されています。6月前後、9月前後に多くみられるため、特に注意してください。