えいご皮フ科

手あれ(手湿疹)

寒い時期には手荒れで悩む方が増えてきます。新型コロナウイルス対策でアルコール消毒や手洗いの回数が増え、いつもより手荒れがひどくなっている方が多いのではないでしょうか。
それでも感染予防には確実な手指消毒や手洗いは必須です。手指衛生で忘れがちなことや手荒れ対策を見直してみましょう。

アルコール消毒や手洗いで忘れがちなこと

1)携帯型手指消毒剤を買う時は、成分を確認しましょう

ボトル型の手指消毒剤はエタノールが多いと思います。濃度は70%以上が推奨されています。
注意したいのは携帯型。塩化ベンザルコニウムが主成分のものが店頭に多く並んでいますが、ウイルスには効果が弱いとされています。購入時に主成分がエタノールか、濃度も十分か確認しましょう。

2)ポンプ式アルコール消毒は根元まで押して出そう

十分な量で殺菌しないと効果は低くなります。十分量とは手に塗り広げても10~15秒は乾かず残っている量です。
ポンプ式の場合は根元まで押せば十分な量が出てくるようになっていますよ。

3)洗い忘れや、塗り忘れしやすい部位を意識しよう

アルコール消毒でも手洗いでも忘れがちな部位は一緒です。指先、親指全体、指の間、掌のしわです。物を触ることの多い指先、親指全体、手のひらは意識してアルコールをすりこみましょう。

4)手洗い時間は十分ですか

厚労省のHPによると、手や指に付着しているウイルスは石けんやハンドソープで10秒もみ洗いし流水で15秒すすぐと1万分の1に減らせます。合計すると25秒です。手洗いには最低30秒は時間をかけることが必要なんですね。

正しい手洗い方法はこちら >>

私の手荒れはどんなタイプ
(日本皮膚科学会:手湿疹診療ガイドラインより)

手をしっとりと保つ働きを「バリア機能」と言います。水分の蒸発を防ぐ"皮脂膜"、角層細胞同士の隙間を埋めてくれる"角質細胞間脂質"、細胞内で水分を保持している"天然保湿因子"が皮膚のバリア機能の元と言われています。
アルコールは皮脂を溶かしだしてしまい、洗浄剤の界面活性剤はタンパク質の構造を変化させ角層の形成不全を生じます。
手洗いや手指消毒を頻回に行うと刺激の繰り返しで皮膚のバリア機能が弱くなり、乾燥して皮膚がめくれやすくなります。
痒みやひどいひび割れがなければ、まずハンドクリームでスキンケアをしっかり行いましょう。どんな成分のハンドクリームを選べばよいのでしょうか。
皮脂膜の代わりをして水分の蒸発を防いでくれる(エモリエント)成分は白色ワセリンやシアバターです。乾燥が強い場合に蓋をする役割です。
天然保湿因子のように水分を保持してくれる成分には尿素やヘパリン類似物質、ヒアルロン酸などがあります。セラミドは角質細胞間脂質の主成分で、セラミドを含有したハンドクリームもありますが少し高価です。
ビタミンEを含んだものは血行促進作用があり、あかぎれができ始めたり、指先が冷えてしもやけができそうな場合に有効です。
手の乾燥が更に進行すると、色々な化学物質が角層を通過して皮膚の免疫にはたらきかけ赤みやじくつきなどの炎症が起こるようになり、手湿疹に進行します。手湿疹には4つのタイプがあります。

刺激性接触皮膚炎

手湿疹の7割は刺激性接触皮膚炎です。アレルギーとは関係なく、弱い刺激が加わり続ければ誰でも発症します。洗剤などが原因となって皮膚バリアが破壊され、はじめは乾燥症状だけだったのが外部刺激に敏感となり皮膚炎が起こります。
はじめは皮膚のめくれとひりひり感が主ですが、進行すると痒みも出てきます。

アレルギー性接触皮膚炎

皮膚に触れた化学物質によって免疫反応が起きることで発症します。その物質が皮膚に触れると敏感に反応するようになり(感作)、炎症や痒みが起こります。
ゴム手袋の加硫促進剤、洗浄剤の殺菌成分など、手に触れるすべての日用品が原因となる可能性があります。問診と診察で原因が特定できないときは、かぶれやすい成分をまとめた検査試薬でパッチテストを行う時もあります。

タンパク質接触皮膚炎

調理で生魚・エビやカニなどに触れると直ぐにじんましんが現れ、その後手湿疹に変化して皮膚炎が長く続く反応です。

アトピー型手湿疹

アトピー体質の方は生まれつき皮膚のバリア機能が弱く、手の乾燥からひどい手荒れ(手湿疹)に進行しやすい方が多いのです。アトピー性皮膚炎の部分症状としての手湿疹で、アトピーは子供の頃に治っているのに手湿疹だけがひどい方も多いです。
また、アトピー体質の方はアレルギー性接触皮膚炎を合併する方も多く、治りにくい場合は日用品や仕事で扱うものにかぶれていないか検討する必要があります。
このような症状にあてはまる方は、ハンドクリームでのセルフケアだけでは肌の状態が整えられなくなっています。当院を受診して、治療と原因への対処をご相談くださいね。

自分でできるスキンケア

米国疾病対策センター(CDC)や日本の手湿疹診療のガイドラインから、手荒れに関するものを拾ってみました。

□ 保湿剤含有のアルコール手指消毒薬の方が、石鹸を使用するよりも手荒れが少ない
(医療従事者での検討)

□ アルコール手指消毒の直後に石けんと水で手洗いすると皮膚炎を生じやすい
(アルコールと手洗いを二重にするのは逆効果)

□ 質の悪いペーパータオルを使用することも手荒れを増やす
(ペーパータオルでこすらず、水気をとるように優しくふきとるのがよい)

□ 界面活性剤を含むお湯と水に手をつけて皮膚のバリア機能を検討すると、お湯の方が皮膚が荒れやすい
(いつもお湯ばかり使って手洗いすると、手が荒れやすい)

□ 手荒れを軽くするには何を使うかよりも、回数多くハンドクリームを塗ることの方が重要である
(高級ハンドクリームより、1回でも多く塗ることが大切)

それ以外にも、手荒れに悩む方へのアドバイスをまとめてみました。

  1. アトピー体質や手荒れしやすい職業の方は、可能なら保湿剤入りのアルコール消毒を選びましょう。アルコールの刺激が強い、手が汚れている場合は石けんの手洗いです。
  2. 手荒れに悩んでいる方は、敏感肌用の固形せっけんや泡タイプのハンドソープを使用しましょう。殺菌剤入りは刺激やかぶれの問題があり、お勧めしません。
    手首や指の間に石けんの泡が残らないように十分にすすぎ、乾いた清潔なタオルで濡れている部分の水分をきちんと拭き取る、こすらないことも大切です。
  3. ハンドクリームは塗る回数が最も重要です。
    日中はべたつきの少ないローションやクリームを選び、可能なら手洗い毎に塗りましょう。指先や爪の周りも意識して塗ってください (ヒビや荒れている方が多い)。高濃度の尿素含有クリームは刺激が出やすいので、肌の弱い方は避けましょう。
    寝る前には油分の多い軟こうタイプのハンドクリームをたっぷり塗って、綿手袋を着ければ理想的です。

文責:医療法人正英会 医師 橋本健治

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